「こんなことくらいで連れて来て良いものかどうか…」(5)に戻る
そのうえで、結果的に大したことはなかったとか、どこも悪くはなかったからといって、なにか困る動物病院などどこにもないということを、この機会に改めて強調したいと思います。
大したことはなさそうだ、病的な状態ではなさそうだ…といった状況判断こそが、獣医師の持つ専門性であり、豊富な経験に基づく診断能力であったりするので、足を運んでいただいた飼い主さんには「ああ、良かったなぁ!」と安心してご帰宅いただけます。
こうした「そのために私たちは存在するのだ!」という仕事を依頼されて、使命感に突き動かされない臨床医などいません。どうか、気のせいかもしれない、思い過ごしかもしれないという自己判断で受診をためらわないでください。
初期段階をはるかに通り過ぎてから動物病院に駆け込む状況では、施さなければならない治療にかかる時間もお金も増大せざるを得ない上、残念なことに、往々にして最終的な治療成績(予後)も芳しくないものとなってしまいます。
着手時点で明るい見通しが持てず、多大な時間と費用を要し、最終的に期待する結果には至らなかった治療となれば、病に苦しむペットはもとより、傍らで見守る飼い主さんにとっても、お世話にあたるすべての動物病院スタッフにとっても、それを望む者など一人として存在しません。
もしペットに異変を感じたら、いたずらに時間をやり過ごしたり、飼い主さん一人で抱え込んだままにせず、診療所に連れてきてあげてください。たとえ結果的に治療が必要な問題が発見される場合であっても、「とにかく連れて来てみて良かった」と思っていただける解決策のオプションを提案できるように、スタッフ一同いつも準備して待機しております。