あおぞら診療日記「クマ五郎くん」

クマ五郎くんは生まれつき関節に障害があり、7歳のころ大きな手術を経験しました。それだけでも大変なのに、その後も数回(決して大げさではなく)死の淵をさまようような病気に見舞われ、そのたびに不死鳥の如く立ち直ってきました。

現在もぜんそくと心臓疾患を抱えながら、ご家族の献身的なお世話に支えられ、漢方の力で後遺症も良好にコントロールし、幾多の苦難を乗り越えた波乱の歴史を感じさせない朗らかさで、愛嬌を振りまいてくれます。

 

 

====================命はもともと自立的=====================
病気になったとき、それを治すとはどういうことでしょうか。
たとえば胃に炎症が生じて食欲がなくなったときに飲む胃薬。
炎症で傷んだ胃粘膜を様々な機序を介して修復することを助けますが、
飲んだ胃薬そのものが胃の中で「正常な胃粘膜」に変身したり、置き換わることは出来ません。
炎症で壊れた胃粘膜も始めはそうであったように、
損傷部を修復するために新調される胃粘膜もまた「身体」が作ってくれます。
繰り返しますが、胃薬は修復の過程を助けるのであって、
飲んだ薬自体が胃粘膜に成り代わって胃の中に存在し続ける訳ではありません。
傷んだ身体(の一部分)を元通りに直すのは例外なく身体自体の営みで、
治療はそれを促したり、邪魔する要因を取り除くだけです。
つまり、命は本来自立的であるということ。それに寄り添うのが治療者の役目。
動物にその自覚を求めるのは無理としても、われわれ獣医療者はもちろん、
飼い主さんにとってもこの深淵なる原理への理解は意義深いでしょう。
命が自立的であることへの理解を(無意識的な場合も含めて)深めた飼い主さんが、
最愛の動物を健やかな状態に保つことに成功している様子は、
獣医師の私にいつも清々しい感動を与えてくれます。
=====================================================

 

「あおぞら診療日記」一覧に戻る

“あおぞら診療日記「クマ五郎くん」” への1件の返信

  1. ピンバック: 「あおぞら診療日記『クマ五郎くん』」を掲載 - あおぞら動物医院

コメントは受け付けていません。