当院では、かねてより動物の疾患の診断と治療計画の立案に「中医学」の手法を取り入れています。また、そこで導き出された治療を具体化する有力なツールとして、様々な漢方薬を活用しています。
ここでは、まだあまり市民権を得ているとは言い難い「中医学」がどんなものかを知っていただき、それがどのように動物の診療に生かされているのかについて、何回かに分けてご紹介していきたいと思います。
普段、われわれ人間が保険診療を受ける際の根拠となっている医学を特に「西洋医学」と呼称して区別する場合もあるように、一口に医学といっても、生体の仕組みや病気のメカニズムを理解するための前提や哲学が異なる、何種類かの「医学」が存在します。
その一つである中医学は、上述した西洋医学が苦手とする分野をカバーするという意味で「代替医療」の一種と考えられている場合が多いのですが、実際にはそうした補助的、補完的な存在などではありません。
中医学自体が、西洋医学に対置されて然るべき規模と精緻さを具えた学問であり、きわめて合理的な治療哲学の体系であることは、いまだ必ずしも広く理解されているわけではないのです。
中医学って何でしょう?(2)に続く