ペット中医学研究会(循環器)講座に参加

 

7月最初の週末は日本ペット中医学研究会(東京)の学術講座に参加してきました。

毎度、朝から晩まで中医学漬けの同研究会ですが、今回は特に内容が豊富で(詰め込み過ぎ?)、近くに座った「最近中医学に興味を持ち始めた」と話す関東の開業の先生は、午後の休憩時に「まったく何言ってるんだか分からなくなってきてるんですが、ぶっちゃけどのくらい経ったら何となくでも分かるようになるもんですかね?」と苦笑いしておられました。

かつてまったく同じか、もっと悲壮感を漂わせてこの場に座っていた私自身のことを、昨日のことのように思い出しつつ、「皆さん同じ気持ちですよ」とお伝えしました。

血は「ケツ」と読みます、脾は「脾臓」ではありません、筋は「筋肉」ではありません…に始まる「同綴異義語」の洗礼を受け、だめだこりゃと投げ出しかけたことも一度や二度ではありません。

中医学の魅力(面白さ)にたどり着く前に馬鹿らしくなってやめてしまう初学者の多さも、今の私自身の感覚に照らしてさえ、無理もないという気がします。

いずれはこうした問題の解消に向けた取り組みについても考えていけるようになりたいと、そんな秘めたる希望も持っています。

肝心の講義内容ですが、今回は循環器を中心テーマに据えたプログラム構成。

私自身は、研究室時代に心臓の薬理学的な実験ばかりを任されていた名残(昔取った杵柄?)で、中医学的な診療を適用する場合でも、特に弁膜症に起因するうっ血性心不全の長期管理手法について、ある種の手ごたえを感じるケースが多い印象を持っています。

犬猫の循環器疾患については、その罹患率の高さから現代西洋医学においても常に中心的な話題です。

しかし、ハイテク画像診断による肉眼的な病態把握と、電気生理学的な研究によるミクロの病態把握という、「両端(両極端?)」で学問的深耕が進むパターンは、現代西洋医学が陥りがちな「還元主義の罠」にはまりやすいリスクを抱えているとも言えます。

つまり、マクロとミクロの間を埋める理論が判然としないまま、循環器の働き全体、あるいは生体における役割を「理解できた」と仮定して設計されたとしか思えないような治療薬であったり、管理手法のようなものが臨床応用されている…私にはそう見えてしまう局面が少なくないのです。

今回の講義では、現代中国の中医臨床における循環器疾患の捉え方についての解説に多くの時間が割かれました。

現代中国の医学は、私が見たところ、現代西洋医学と伝統的中医学の相互補完的な二本立てで成り立っているように思われますが、今回の講義で、上述した循環器疾患の(マクロとミクロの)「両端」を埋めてつなぎ合わせる学識として、中医学が極めて有用であるとの認識が示されるに至り、私の中ではかねてからの点と点が一気に線となって繋がったような、興奮と感慨を禁じ得ませんでした。

当院が中医学的手法を取り入れてお世話させていただいてる、進行した心臓病のペットたちが、現代西洋医学的な標準治療の想定する期間を超えて、極めて長期にわたり高いQOLを維持するケースにしばしば遭遇する理由も、おそらくはこの辺りに存在するのでしょう。

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