福太郎くんはいつも元気で大きな病気をしたこともない健康優良児。とはいえ、世間のワンちゃんが一様に抱える小さなトラブルに、福太郎くんだけが全く見舞われないという訳にも行きません。そこを何とか回避したい飼い主さんは、たとえば耳のお手入れをしてあげようと一生懸命に福太郎くんに向き合うのですが、この「愛」はすんなり行かないこともしばしば。なにしろ飼い主さんの愛情に一片の疑いも持っていない福太郎くんですから、気分が乗らないと結構強気のスタンスで嫌々モードに突入し、飼い主さんを悩ませちゃったりします。
しかし、そこは何といっても飼い主さんの「愛」ですから不屈。めげず、くじけず、根気強く、当院の助言を着実に実行してくださった結果、強気一徹・福太郎くんの嫌々モードも次第に影が薄くなり、いまではたまに耳の状態チェックに連れられてくる福太郎くんが即座に「要加療」と診断されることもなくなりました。
この経緯を、やれば出来る!的な根性論とみる素直な見方もなくは無いでしょう。でも、日々ペットと飼い主さんの関係性を目の当たりにする臨床獣医師の立場からは、ヒトである飼い主さんの思いは、動物であるペットに必ず伝わるものだという実例のように見えます。言語によるコミュニケーションに依存するわれわれ人間が忘れてしまった、相手の「思い」を言語化せずに直接読み取る力を、たぶん犬や猫たちは当たり前に持ち合わせていて、だからペットへ向かう飼い主さんの「愛」は必ず報われるのだなと、福太郎くんの変化を見るたびに納得させられるのです。
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