鈴ちゃんは三年ちょっと前、血尿を伴う膀胱炎様の症状に見舞われました。西洋医学的な定石に従った抗菌薬を主軸とする治療の結果、ほどなく回復しました。ただ、検尿所見においては潜血と尿のアルカリ化が継続し、尿サンプル中に鏡検的な結晶の析出も認められました。
鈴ちゃんはキャラクター的な線の細さがあり、ご家族以外の人間に対してかなり緊張する傾向があります。尿路疾患の重症化で入院加療が必要になった場合、様々な困難が予想されました。小さくない確率で症状の再発が見込まれる西洋医学的な「逐次対症療法」より、さらに高い次元での小康を得ることを目標に、中医学的を用いた体質レベルでの未病化を図る「養生療法」の提案を行いました。
鈴ちゃんのわずかな変化も見逃さないオーナーさんの日常観察により、中医学的な漢方療法はその効果を遺憾なく発揮。処方や用量の臨機応変な調整を経て、最終的には極めてコンパクトな単処方のみでの無症候化を実現。尿を酸性化させるために汎用される制限食(尿石症療法食)も用いず、食事は慣れた普通のフードのまま。四季を通じて再発に悩まされることのない平穏な生活を送ることができています。
ピンバック: 「あおぞら診療日記『鈴ちゃん』」を掲載 - あおぞら動物医院