あおぞら診療日記「マイティーくん」

若いマイティー君の手に真っ赤なドーム状のしこりが出現し、飼い主さんが相談にみえた時点での大きさは直径およそ10ミリメートルほど。

この組織球腫様のしこりは自然消退することもあるため、経過を観察したところ、わずか一週間後には倍以上に増大。免疫抑制性の薬剤による試験的内科治療も報告されていますが、増大傾向の顕著なものについては、通例、外科的切除生検による確定診断が推奨されています。

感染性皮膚疾患等の除外診断後に、当院が手掛ける中医学的な解決法も検討対象に加えて協議した結果、外科的介入に先立ち、漢方薬を使用した治療を試行することにしました。

痰湿瘀血を解消する漢方処方に加え、アンテドラッグ型コルチコステロイド剤の外用を併用したところ、幸運なことにしこりは速やかに退縮し、三週間めには一切の痕跡を残すことなく完全消失。外用コルチコステロイド剤からも速やかに離脱し、外科も回避できました。

 

====================命はもともと自立的=====================
病気になったとき、それを治すとはどういうことでしょうか。
たとえば胃に炎症が生じて食欲がなくなったときに飲む胃薬。
炎症で傷んだ胃粘膜を様々な機序を介して修復することを助けますが、
飲んだ胃薬そのものが胃の中で「正常な胃粘膜」に変身したり、置き換わることは出来ません。
炎症で壊れた胃粘膜も始めはそうであったように、
損傷部を修復するために新調される胃粘膜もまた「身体」が作ってくれます。
繰り返しますが、胃薬は修復の過程を助けるのであって、
飲んだ薬自体が胃粘膜に成り代わって胃の中に存在し続ける訳ではありません。
傷んだ身体(の一部分)を元通りに直すのは例外なく身体自体の営みで、
治療はそれを促したり、邪魔する要因を取り除くだけです。
つまり、命は本来自立的であるということ。それに寄り添うのが治療者の役目。
動物にその自覚を求めるのは無理としても、われわれ獣医療者はもちろん、
飼い主さんにとってもこの深淵なる原理への理解は意義深いでしょう。
命が自立的であることへの理解を(無意識的な場合も含めて)深めた飼い主さんが、
最愛の動物を健やかな状態に保つことに成功している様子は、
獣医師の私にいつも清々しい感動を与えてくれます。
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