中医研の7月例会

 

 

今回の中医研は「診断」の方法について。

中医学の対面診断方法には「望診」「聞診」「問診」「切診」があり、四つまとめて「四診」といいます。

「望診」は読んで字の如く、視覚的に診断すること。顔色、顔つき、毛並み、四肢の肉球、そして舌を見ます。

「聞診」は字面通りの聴診のほか、臭いを嗅ぐことで診断を付けようというもの。呼気や体臭、排せつ物の臭いの性質や程度から、病気の性質をあぶり出します。

「問診」はおよそ西洋医学でいう問診と同じで、飼い主さんの主観に基づく訴えの中から、医療インタビューの技術を駆使して事実部分を切り出し、病気の輪郭をはっきりさせるプロセスと言えます。

「切診」は西洋医学における触診に近く、おなかを触る腹診から、整形外科的な身体可動部の検査までをすべて含みます。中医学を特徴づけるものとしては、体表の脈動を触診する「脈診」が有名で、動物では大腿部内側の股動脈付近で捉えます。

どれも診断的な意義や精度において一長一短あるのは西洋医学の臨床検査とまったく同じ。どんなに有用と言われる検査法でも、一つや二つの弱点・難点はあるものです。

中医学の動物への適用が始まったばかりの頃は、舌診も脈診もヒトの知見を外挿できるのか?という論点に加え、「そもそもどうやって確認するの?」「犬の舌って生まれつき青や黒の斑(まだら)があるけどどうするの?」といった議論や疑問が立ちはだかりました。

まだ中医学の勉強を本当に始めるかどうか自体を迷っていた私の目の前で、そうした問題についてさも楽しそうに盛り上がっている獣医分野でのパイオニアというべき先輩諸氏の姿を眺めながら、こりゃとんでもない大仕事に自分は首を突っ込みかけてるってことだよなぁと空恐ろしく感じたことを、今でも覚えています(笑)。

そんな私も、気長に、執念深く、中医学と獣医学を股にかけて何年も過ごすうちに、まだらだらけのワンちゃんのベロを見ても、それなりにヒントを得られるようになってきたことには、我ながら感慨深いものがあります。

ただし、ネコちゃんについては、何しろご存じのとおり、我々とは似ても似つかぬ非常に変わったベロをお持ちでらっしゃる関係で、いまもって犬のそれに比べると舌診の診断精度はお世辞にも高いとは言えない状況。この辺がどうなってゆくのか、オタク的な興味は尽きません。

私を除く中医研のメンバーは、全員ヒトの先生なので、舌診の話題になるたびに「犬も悩むとこんな舌になるの?」的な好奇心を発揮してくださいます。

たとえば私は、メンバーの先生同士で互いのベロを分析し合う練習(実習)により、大いに腕を上げ得るポジションにいますので、有り難いことこの上ない状況。

一方、ヒトの先生方にとっては、私が披露する講談まがいの犬猫ベロ談義を聞かされたところで、ほとんど仕事の役には立たないよなぁと思いながらも、他では聞けない?犬猫ベロ情報を語らずにはいられませんので、ちょっと迷惑な存在かもしれません(笑)。

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