小泉進次郎ならOK?

私の意見としては、本来国会議員ともあろうものは「普通の人」がなるような職種ではなく、

「並」を大きく上回るような能力のある稀有な人材を公費で雇い上げ、天下国家のために

働かせようというのが、おそらくは本来の姿に近いのではないかと思っている。

 

その意味で、議員の世襲は大問題だという立場をとっている。現状で、国会議員業?は

完全に「家業」となっており、本人の出来が悪い場合でも、それがなんと恐ろしいことに

「議員にならない」事由には全く該当しないという現実がある。

 

小泉進次郎も、発言を聞く限り、その内容は新橋のガード下で「先生」と呼ばれる物知りの

おじさんのレベルであり、飲み屋のおじさん博士との違いは、一見爽やかそうなルックスと、

そして何と言っても「氏素性」だということ。

 

世俗に造詣が深いだけでなく、学問的な基礎が重厚なエリートにこそ、政治家をやって

もらった方がいい(アホな有権者は騙せても、海外に出したときに馬脚を現す。現首相が

その最たる例。お勉強だけ出来ても駄目だけど、お勉強が出来ない人はそれ以前の問題

で論外)のだが、悲しいかなエリートは何しろアタマがいいから、地に落ちた「日本の政治家」

になんか、バカじゃないからなりたがらない。

 

その小泉進次郎が、大阪の橋下や安倍首相が拒否している「ぶらさがり取材」に応じている

のは偉いじゃないか!とぶらさがる側の連中がもてはやしているらしい。そんなことはどうでも

いいのだが、その紹介記事(5月26日産経)の中に「おやっ?」というくだりがあった。

 

(以下引用)

--訪朝した飯島内閣官房参与が「実務者の話し合いは終わった。首相と官房長官の判断次第」といっている。

拉致問題の進展、今の期待感は

「そう簡単な問題じゃないと思いますけどね。なにせ、一度拉致を認めて謝罪をして、その後、おそらく、北朝鮮が思った

展開と逆の展開になったわけでしょう。国交正常化。これで進むと思ったけども、逆に日本国内の怒りと反発がきて、

だったらどうして、謝罪までした意味があったのかと」

「そういうふうに、あちらが思ってるとしたら、簡単に話に乗ってくるような話はないと思うので、これは冷静に判断しないと

いけないなと。この問題も、あまり目先のことで、右往左往してはいけないと。どっしりと」

「とにかく、日本の政権が強いとみればね。あちらも交渉乗らざるを得なくなると思いますから参院選勝つんです。

この政権とは長く付き合わないといけないという、そういう政治体制をつくる。私はそれが大きな、あらゆる外交のテコに

なると思いますので」

(引用終わり)

 

拉致問題が報道されるときには、当然の如く「拉致問題解決のため」とか「拉致問題が解決しない限りは」云々と表現され、

実際多くの国民はそれに慣れ切って、なんらの違和感を覚えないだろう。しかし、実はそこにまやかしというか、議論の

すり替えがある。それを何と進次郎君がこともなげに語ったのが上記である。

 

まだ筋が分かりづらい場合に備えて補足すると、「北朝鮮はすでに拉致を認めて謝った」にもかかわらず、北朝鮮が期待

していたのとは裏腹に、ますますもって日本の心証が悪くなり、国交正常化交渉などとてもじゃないが無理という状況に

なってしまったではないか・・・と、当然北朝鮮は苦々しく思っていますよと、そう解説したわけである。

 

別の人がこんなことを言ったら、果たしてどういう扱われ方をしただろうか。

 

結論から言うと、上記の進次郎君の話は実に正鵠を射ている。署名人小泉純一郎の息子だから、当然といえば当然であろうか。

この点は、たとえば元祖外務省見切り系学者の浅井基文氏なども指摘している。つまり、2002年の小泉純一郎と金正日

会談における「日朝平壌宣言」の第3項において、

 

「3.双方は、国際法を遵守し、互いの安全を脅かす行動をとらないことを確認した。また、日本国民の生命と安全に

かかわる懸案問題については、朝鮮民主主義人民共和国側は、日朝が不正常な関係にある中で生じたこのような

遺憾な問題が今後再び生じることがないよう適切な措置をとることを確認した。」

 

とあり、要するに拉致問題は外交的には決着済みだということをさす。そう聞くと「はあ?」とすぐ反論したくなろうが、

ここに前述のまやかしがある。すなわち、

 

「拉致問題」イコール「生存者帰国問題」

 

というトリックである。いまさら言うまでもなく、これは全然別個に議論されなければならない問題であり、

それをさっぱり進めずにきた日本の政治の怠慢を棚に上げて、とりあえずこれも全部北が悪いことに

しておこう的な欺瞞が浸透しきっているわけである。

 

既に、外交手続き上は「非を認めた」し「謝った」と加害側は認識しているが、被害側は道義的に解決済みとは

いえまいという議論とごちゃ混ぜにして(わざとそうしている勢力も、当然ある)「まだ解決していないだろ!」

と取り合わない。

 

日韓基本条約をめぐるやりとりと、ちょうど立場をひっくり返したかのように見えなくもない皮肉な構図。

 

そこには、そう信じ込まされやすい前置きというか、下準備が周到になされている(北朝鮮が悪者で、アメリカ様が正義

の救世主ですよという刷り込みなど)ので、見抜けない日本国民の蒙昧さだけを責めるのは酷な気もするが、

とにかく、小泉進次郎は少なくとも、その辺の全体像を概ね理解しているということが、私にはちょっとした驚きだった

わけである。

 

外務省追い出され系の後輩?にあたる天木直人氏に言わせると、何のことは無い、日本と北朝鮮の国交正常化が

進まないようにあの手この手で横車を押して(日露が領土問題で妥協しないように画策するのと全く同じパターン)

時間稼ぎしている間に、当のアメリカ様が実は北と話をつけてしまい、ある日突然、日本の頭越しに米朝国交正常化を

高らかに宣言する・・・アメリカなら、それぐらいのことはへっちゃらであるそうな。

 

飯島何某が訪朝したのは、彼の身の程知らずな自己顕示欲と参議院選挙対策に過ぎないとの指摘もあるし、

小泉父さんが拉致被害者を連れ戻したときには、当然北に巨額の資金供与があったであろうことを推測する向きも

少なくないし、まあ、進次郎坊ちゃんの言う「そう簡単な問題じゃないと思いますけどね。」は、文字通り、

大変重~いお言葉なのであろう。いずれにせよ、上は内閣総理大臣から、下は中学高校生に至るまで、

何のためらいも無く「拉致問題解決無くして・・・」とだけ言い放って、そこから完全に思考が停止してしまう

現状は、千年一日の如く「謝れ!」「謝っただろ!」「いや謝ったことにならねぇ!」を繰り返し、

一体何年経っただろう?の二の舞になるだけ。

 

現実に解決したいのかどうか、現実に事態が動くことよりもてめえの言い分を叫んで溜飲を下げたいだけなのか、

政治家も国民も、共にその本気度を試されている局面であることを肝に銘じるべきだと思う。