いまさら指摘するのもなんだが、問題発生から二年以上たった今でも、
つまり二年以上もゆっくり考える時間があったというこの期に及んでも、
初歩的なボタンの掛け違いについて、まったく自覚できないというか、
その存在自体が認知できない、重篤な思考停止状態を目の当たりにし、
改めまして「呆れ返った」次第。
アタマすっからかん系の指標メディア・産経新聞サンの記事から、
福島原発4号機、カバー内部初取材
骨組み完成「作業は順調」
まあ、この見出しだけでも十分笑えますね。いきなり「骨組み完成、作業は順調」ですぞ。
日本国内で骨組み作るのが、一体いつからそんな難しくなったのか
恥ずかしながら小生は知りませんでしたし、ぶっ壊れた原発の敷地内なので高線量ゆえの
難しさがあるなどとは、産経だけに認めるわけにも行かないでしょうから、
結局、なんで骨組みが完成するとそんなに誇らしいのか、分かりかねます。
大変なのは実際の燃料棒に触れる算段、動かす算段、そしてそのもって行き先の算段。
それとて、比較上、もっとも燃料棒自体の損傷が少ない4号機のプールですから、
お隣さんの3号、2号、1号はその比ではありませんので、ますますもって4号建屋の「足場の骨組み完成」と
「作業は順調」という配列は、本来な~んにも関係ない話題を、意図的に並べて錯誤させようとする
歪んだ意図が見え見えであります。
そういえば、3号機はMOX燃料混在だし、一体どうするのかね?
恥も外聞もない屁理屈だけが存在理由のプルサーマルは、さすがの原発シャブ漬け自治体でも気持ち悪がって
なかなか引き受け手がないのでしたが、わが郷土の女川原発はすでに受け入れ承諾済み。
原発銀座の大先輩、若狭湾岸の皆様からも「騙されてるのか、もしかして本当に馬鹿だから
危なさが分っていないだけなのか!?」と畏敬の念で見つめられた女川プルサーマル許諾ですから、
シャブ漬け連盟のメンバーとして、宮城県は相当の箔がついているともうせましょう。
開いた口がふさがらないほど名誉なことですね。
話が飛んでしまいました。産経新聞の記事ですが、
「・・・東京電力福島第1原発の4号機建屋カバー内部で、報道機関として初めて現地単独取材を行った。
また、高濃度の汚染が確認された海側の観測用井戸も初めて取材することが許された。」
とあります。
憎き天敵・習近平中国主席の単独インタビューは無理としても、命じられれば足の裏でも何でも舐めて
あげたいご主人様・オバマ大統領にでも単独取材ができたなら、まあ一定の自慢話にはなろう。
しかし、東電の、日本の赤っ恥の爆心地である福島第一発電所の足場の内側を見せてもらったことの、
何がどう「初めて」とか「単独取材」とか形容する価値があるのでしょうか? 不思議としか言いようがありません。
産経ぐらいにしか、恥ずかしくて見せられない、粗探ししないでねっ!とかウインクして通じるのは
産経か読売しかないという、ただそれだけにしか見えません。
それなりに頑張っている(いた?)東京新聞はともかく、でたらめ朝日や斜陽毎日などうっかり現場に呼んだら、
それこそここぞとばかりに痛いところをグリグリほじくられて、彼らの手柄にされてしまうのがおち。
東電はそんな連中を呼び寄せたくないだけです。
でも、何より、なんと言ってもぶっ飛んでいるのが、
「取材することが許された。」
のくだり。
許してくれたのだと、ありがたいのだと、東電様に感謝しているわけです。
二年も経つのに、腹でどう思っているかはともかく、まだこんなに正直に東電様のご威光にひれ伏す
心境を率直にペンで言い表す産経新聞の純朴さに、私は心底感動いたしました。
念のために言っておきますが、あれほどの大失敗をして、だれ彼かまわず人工放射線源を
浴びせかけた福島第一の現状は、事実上、とうの昔に破綻したゾンビ企業・東電の意向によって、
公表されたり、非公表にされたりすべき対象では、元々ありません。福島第一に関する情報が、
そんじょそこらの内輪ネタとは比較のしようがないほど高度な公共性を有するに至った原因。
それが、福島第一爆発事故という汚辱なのです。
それを、発電所の管理運営に完全に失敗して、放射能の閉じ込めに全くの無能ぶりをさらした
東電ごときに「許可をいただく」ものだと疑いもなく信じているおめでたさに、産経の知的水準の
ほどが、よく表されています。
繰り返します。福島第一の状況や見通しが、その運営に失敗した張本人である東京電力に
牛耳られている現状の方こそが、異常なのです。しかし、民主党も自民党も、それでいいのだと言い、
実際、警察も消防も検察特捜も、だれも現場検証に行きませんし、事情聴取もほとんどしていません。
どうしてそんなことになるのか、今もって私には分りませんが、そこでは日ごろ世間で認められている
「社会通念」とはどう逆立ちしてみても相容れない異常さがまかり通っており、だから産経レベルだと、
その異常さを「隠す」ことにすら思いが至らないと、そう理解するほかない驚愕の大スクープ記事でした。