自分の身体の状態、健康であるか、どこか具合の悪いところがあるかといったことは、他に匹敵するものなど何もないだろうというくらい高度なプライバシーに属する事項です。決して他人に干渉、侵害されるべきではない個人情報であると、以前からずっと私は認識しており、今後も変わらないだろうと考えています。
その意味で、二年にわたる新型コロナウイルス騒動に対する私の見方や捉え方は、原則として「私自身の身体状況に関わる問題」であり、自分以外の人々がどのように騒動と向き合うかについて、(それが私の考えと違うからといって)軽々に論ずるのは妥当ではないと思いつつ過ごしてまいりました。
同時に、日々のペット外来診療の場などで、私が有する専門性を頼りに情報を求めて質問してこられた方々には、最大限の慎重さをもって、なるべく分かりやすく、誠実に、私の見方や捉え方をお伝えするよう心掛けてきました。
いずれにせよ、これだけ多くの情報が、異なる立場から様々な形で流されてくる現状にあっては、ひとりひとりが持てる見識を恃み、各人が最善と思われる選択を重ねて、この混乱を乗り越えてゆくしかない、「正解なき局面」であろうというのが、私の中では結論となっておりました。
しかし、新型コロナウイルス感染症の流行性感冒としての特徴が明らかとなった今になって、子供たちに「m-RNA型ワクチン」と呼ばれる「核酸医薬」(従来の定義によるワクチンとは全く別の作用機序を有する新しい医薬品)を一律広汎に投与しようとする政策が打ち出されました。こうなると、上述した私のスタンス(人は人、自分は自分で、人さまのことに口出しはしない)を維持する前提が失われてきたことになります。
子供は、なにぶんにも子供なので、自分自身の人生に関わる難しい判断を独力で行うことは原理的に不可能です。子供の安全は、周囲の大人が全力で担保すべきもの。子供は大人によって幾重にも守られる中で、長い人生のスタートを切るのです。かくいう私も、そうした大人たちに守られ、著しく間違った判断の害悪に巻き込まれることなく、半世紀以上、おおむね健康に生きてくることが出来た一人として、幼い私を守ってくれたたくさんの大人たちには、感謝の気持ちしかありません。
新型コロナウイルスは、おびただしい数の変異型を生じながら現在に至りますが、20代未満の若い年齢層において、新型コロナウイルス感染症が単独で命を脅かすような病毒性を発揮した事例は、世界中のどこにもありません。さらに、その原因はまだ特定されていませんが、我々日本人を含むアジア人には、極めて高い耐性(新型コロナウイルス感染症に抵抗する力)が存在することも観測されています。これは私の意見ではなく、公的な統計が一様に示す、信頼に足る事実です。
近い将来、かつて大人の判断でm-RNA型ワクチンという名の核酸医薬を投与された子供たちから、「どうして私たちにあの核酸医薬品を投与したの?」と聞かれたときに、一体なんと答えるつもりなのでしょうか?
老人に加え、子供の命を狙い撃ち的に脅かす季節性インフルエンザとは異なり、たとえ感染して発症しても、上記の通り、子供の命を脅かすことはないのが分かっている新型コロナウイルス感染症を「予防」する目的で、その有効性も、中期長期の安全性も確認していない新しい核酸医薬を投与した理由が、「政府が打てと言ったから」や「周りの大人にうつすと困ると思ったから」、あるいは「みんなが打つのに打たないと非難されるから」などといった内容で良いのか? それで大人は子供を守る責任を果たしたのだと主張して、成長した子供たちは納得できるのでしょうか?
私は獣医師として、新型コロナウイルス騒動の以前から、ペットの飼い主の皆さんに各種ワクチンの接種を推奨してきました。また、法律で義務付けられた狂犬病予防接種の普及、啓蒙にも努めてまいりました。今回の騒動を機に、改めてそれらの妥当性、必要性について詳細に検討し直し、自分自身の知識の更新と整理も進めました。その結果として、今後も引き続き接種のメリットが明らかな対象動物の飼い主さんには、積極的にワクチン接種を推奨していく方針を再確認いたしました。
余談ですが、私自身や我が家の子供たちについても、効果や便益があまり感じられない季節性インフルエンザや水疱瘡ワクチン以外は、積極的に接種を受けていますので、最近のSNS流に言うなら、「ゴリゴリのワクチン推進派」かもしれません笑。
にもかかわらず、現在政府が推し進めようとしている、m-RNA型ワクチンなる核酸医薬を一律に子供たちへ投与する方針には、非常に強い不安を禁じ得ません。
「なぜそれを投与(接種)したのか?」という問いに対する科学的かつ論理的な答えを持たない大人が、無抵抗の子供たちに「著しい不確実性」というリスクを強要するのは、どう強弁しても正当化はできないと考えるからです。
今すぐに慌てて行動に移さず、熟慮の時間を確保してから、お子さんと正対し、後年、胸を張って投与(接種)した理由を説明することが出来るかどうかを、まずは今現在の大人自身が突き詰めるのが先ではないか。私はそのように考えて、反対意見の表明を行うことにしました。
なお、投与(接種)の判断に役立つ情報をお求めの方、専門的あるいは学術的な内容を理解するために助力が必要という方がいらっしゃいましたら、どうぞ遠慮なく当院までご連絡ください。ここでは触れなかった免疫学的な考察や、感染症と戦う武器としてのワクチンや抗菌薬の歴史など、学際的な内容も分かりやすく解説いたします。小さなグループ勉強会のような形、お茶のみしながらなど、これまでも、これからも、よろこんで(もちろんノーギャラです笑)お役に立ちたいと考えております。
この二年間、世の大多数のお医者さんの言動について、大いに疑問を感じて参りましたが、少数派ながら近代医学・生物学に忠実な姿勢を崩さずに戦う先生方もおられることを知り、深く感動いたしました。