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その健診、意味あります?【上】

その健診、意味あります?【上】

フィラリア予防薬前の採血時など、健診(健康診査)として血液検査を勧められることも多い季節です。

ところで、健診として行われる血液検査の項目が、どのようにして決められるかをご存じでしょうか。

少なからぬ人にとって、答えはちょっと意外なものかもしれません。

基本となる項目が決まる理由は、コストや採血量(採血の容易さ)など、所与の条件の下で,

「それが選べるから」「それなら検査できるから」

に過ぎません。

それらの項目を検査すれば「健康状態を把握できる」ものが選ばれたり、網羅されるわけでは必ずしもありません。

検査できるもの、検査しやすいものを測ってみる。そして、それら各項目の測定結果それぞれに対して参照値(あるいは参考値、基準値など呼び名は色々)の範囲が設定されているだけ。

あなたの測定結果は、参照値の範囲内でしたね、または、はみ出てましたねと指摘することが、一般的な「報告書」の役目です。

日常会話的には、範囲内なら正常、範囲外は異常だと思われているのですが、それだと学問的には正確じゃない認識なので、検査実施機関も(あとで突っつかれないよう)昔のように「正常値」という言葉を避けるようになってきました。

では、大半の人が正常値だとおもって眺めている、その「参照値(参考値、基準値・・・)」はどうやって決めたのでしょうか。

厳密な手順は、様々な解説をウェブ検索してもらうことにして、ここでは、たくさんの検査結果を統計的に整理して、「誰がどこから見ても健常だった人(動物)の八割以上くらいは、結果がこの範囲内に収まりました」というときの「幅」を示したものと思えば十分でしょう。

それはすなわち、裏を返せば「参照域のど真ん中でも、がっつり病気の状態の人(動物)が1割前後は含まれる」ともいえるし、「全くどこにも問題は無いのに、参照域からはみ出る場合も当然ある」ということを意味します。

そしてこのような性質は、同時に測定される検査項目のそれぞれ全部に当てはまるので、膨大な数の「組み合わせ(パターン)」が存在することになります。

さらにその先を考えようとすれば、複数の項目の間に関係性は有るのか無いのか、有るならどのように解釈するのか、2つの項目の間だけの話なのか、或いは3つ4つ以上の項目にまたがる関係性なのか・・・と、話はまとまるどころか、とめどなく広がってゆく可能性の方が高いかもしれない展開をみせます。

測定された数値を羅列しただけの検査結果一覧というのは、途方もない上記の作業に入る直前の段階であり、後はそれを渡された人の方で何とかしてくださいねという、議論の「入口」に過ぎないということです。

元々検査を受けた個体(結果数値の出どころ)は言うまでもなく「1つ」です。一つの個体から、様々なヒントを切り出す作業が検査です。

検査結果一覧を見て、元の「1つ」の個体を評価するためには、項目ごとの結果数値を再度束ね直して、上記の通り、複数の項目相互の関係性が有るか無いかにまでさかのぼって評価する作業が必要です。

ものすごく複雑な「1つ」の個体から、単純化した「部分」を切り出して調べ上げ、そこで分かった成果を再び束ね直して、元の複雑な「1つ」の全容を理解しよう!という発想を還元主義といいます。

この還元主義はなんとなく上手くいきそうな感じなのですが、生きた動物の身体はあまりに複雑で、かつ神業レベルの統合制御の下で運転されているため、単純化するとか、部分に切り分けるということ自体が容易ではありません。

半ば無理やりにでも切り分けたところで、それを再び力技で束ね直そうとすると、巨大な誤差と矛盾の山が築かれて、いつの間にか結論はとんでもない方向へ飛躍。

その結果、「動いているのは太陽じゃなく地球の方だった!」に類する誤認に、ずっと後になってから青ざめるような歴史が、医学生物学の世界でも繰り返されてきました。

青ざめるとまではいかなくても、健診検査の解釈にも全く同じ構造の危険が付きまとっていることは、検査する側もされる側も十分知っておく必要はあるのです。

上記の還元主義については別稿で解説したもののリンクを貼っておきますので、ご参照ください。

(「還元主義」説明はこちら➡「当院の考え方:漢方・統合医療について」

(その健診、意味あります?【中】につづく)

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