エドワード・スノーデンという名前が世間の耳目を集めだした頃、
この男について流された「形容」は、今にして思えば馬鹿げたものばかりだった。
曰く、「オタクである」「女のような容姿で、自らが最もそれを愛している」などなど。
彼が実行した反逆(ということになろう、ひとまずは)がもたらすであろう米国当局
への歓迎ざれざる影響の甚大さを前に、狼狽し、なりふり構わずスノーデン潰しの
ためのネガティヴ・キャンペーンを展開したことの証左だったらしい。
このところ、アメリカを始めとする世界レベルの権力機構が、あまりに悪質な企みを
日常化させている実態に立場上気づいてしまった人たちの中から、それを知らん
顔して秘匿することに良心の呵責を感じる人物が続出し、具体的な行動を通じて、
権力の悪だくみの実相を世に問う動きが、我々下々の目に見える形で表面化する
時代になってきた。
これは、日本とておそらく例外であり続けるのは困難だろうと思われる。
我が権力はご他聞にもれず市民に対する統制を強める方向で抜かりなく準備を進めており、
天変地異を方便に「私権の制限」にまで踏み込んだ有事法制だの、自らの身勝手な暴走を
制度的に抑制する役回りであった憲法を、権力ではなく市民の自由を束縛する代物に改変
すべく、来たる選挙で「国民が何がなんだか分からないうちに」合意を取り付けた形を作って
しまおうと、泥縄の仕込みが進行中でもある。
ほかにも例えば、金食い虫の前時代的遺物に過ぎない原発に経済合理性があるなどと大ぼらを吹き、
経済合理性のなさにおいては原発に勝るとも劣らない現行の太陽光発電だけが、さも原発に対する
オルタナティヴであるかのような大宣伝に踊らされる「良心的な国民」が少なくない現状も、
大規模洗脳社会の成果としか言いようがない。
(念のため申し添えるが、筆者は自然エネルギーの研究や高効率化の努力が全て悪いと言っている
訳ではない。ただし、既に高い完成度が実現済みのガスや石炭火力発電への大々的な切り替えという、
最も現実的かつ合理的な対応をすっ飛ばして、温暖化防止だ太陽光だ風力だとさえ言ってれば税金が
降ってくるような状況を何とも思わない乞食根性に、私は同意できませんがねと言っているだけである。)
日本にだって、古い流儀で今後も乗り切れると信じて疑わない連中が牛耳る統治機構を、腹の底から
震え上がらせるような秘密の暴露が飛び出す余地は、当然いくらでもあるということである。
スノーデン氏は、それに気づいた以上、それを食い止めるための行動に出ないわけには行かないでしょう?
と語っている。原発にぶらさがる人々同様、個々の本来の甲斐性に比しての「金回りの良さ」でたらしこまれた
ようなハワイ暮らしを経てもなお、それらを失うだけならまだしも、間違いなく命まで狙われる選択をしたという
物語は、やはり衝撃的なのである。
下はお馴染みデモクラシー・ナウで放映された本人インタビュー動画。
米国の監視体制をあばいた
NSA内部告発者エドワード・スノーデンが
名乗り出る
そんな単純な話ではない、スノーデンの存在自身が諜報的なスキームではないと誰が
証明できるのか?という視点はもちろんあり得る。
それでも、彼がインタビューの中で語った筋書きは、彼の立場や人間性を度外視して、
純粋に物語として聞いただけでも、十二分に今を生きる私たちにとって示唆に富むもの
だと思ったわけである。彼が語るような世界が、私たちが生きている世界の真実なのだ
としたら、次に起こることは火を見るよりも明らか。個々人が身を守る準備をしなければ
ならないとしたら、実はもう既に手遅れ気味かもしれないという認識は、市民一般にとって
命にかかわる「緊急安全情報」みたいなもの。スノーデン氏の中性的な風貌にばかり
気をとられている場合ではありませんよと、上記動画は訴えている。
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