いつも穏やかなチョコくんが胃腸症状を訴えて当院へやって来たのは師走。ときどき皮膚や耳のトラブルで治療歴はあったものの、胃腸障害の既往はほとんどなく、飼い主さんにも原因に心当たりがないと聞けば、これはちょっと訳ありの気配。定石に従った対症療法で前記の主訴は速やかに解消しましたが、細かく見ていくとどうやら断続的に生じる通過障害(胃腸の内容物がうまく先へ流れなくなること)の存在が見えてきました。
結論は前立腺の顕著な腫大と会陰ヘルニア。ある時期からチョコくんの排便がスムーズでない様子も認められたと後に明らかとなり、初診から約二か月後、会陰部が肉眼的に膨れ上がってきた時点で、飼い主さんは手術を決断されました。
会陰ヘルニア罹患犬の例にもれず、チョコくんの会陰隔壁はすでに両側性に破綻しており、片方は潜在精巣の総鞘膜移転で、もう片方は内閉鎖筋の反転により閉鎖・再建する方法を採用しました。手術後の隔壁は堅牢で、飼い主さんの細かなケアと中医学的な養生のもと、ヘルニア再発等の問題も一切なく、チョコくんは平穏な毎日を過ごしています。
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