当院の考え方
Our Core Principles
診療ポリシー
病気の捉え方
病気に『なる』ことの方が『例外的な事象』
「病気になるのは仕方がない」って本当でしょうか?
秋晴れの下、仲間とハイキングに出かける予定の日に雨が降るのは仕方がない。この「仕方がない」には誰しも頷けます。今のところ、天気を自由に操れる方法は無いと考えられていますから、諦めて土砂降りを受け入れるほかありません。
では、快晴の朝、楽しいハイキングを前に自分だけ風邪をひいて参加できない場合はどうでしょうか。
当然のことですが、風邪は誰でもひくものですし、ひいてしまった以上は観念して寝ているしかありません。加えて、たまに風邪をひくことで生体防御システムがリフレッシュされ、強制的な休養の効果と相まって、風邪をひく前よりも体調がすっきり整うこともありますから、失意や落胆が「まあ仕方ないよね」に昇華されるのも時間の問題でしょう。
しかし、ここで大事なポイントは、「風邪をひいてしまった」という結果自体は仕方がないが、大事なときに風邪をひかないために出来る、努力や工夫の余地がなかった訳ではないという点です。風邪をひくことは「あ、しまった、ミスっちゃったな」が原因であり、純然たる不可抗力の天気とは、やはり違うのです。
ではいよいよ、風邪では済まないような「病気になる」場合はどうなのか?という問題を考えます。
私たち人間を含む動物の身体は、高度に精密な制御と驚異的な強靭さや回復力を兼ね備えた奇跡のようなシステムであり、まさに神の創造物と評すべきレベル。それが壊れるにはよほどの理由があって然るべきだと考えねばなりません。
身体というシステムの「使い方」において、長期間、繰り返し、相当の強度で、不自然さや誤りが放置された末にとうとう「病気になる」。
病気になってしまった以上、そのこと自体は「仕方がない」と受け入れるほかない。ここまでは風邪と同じでしょう。
しかし、上述した通り、奇跡のレベルで制御された身体システムが破綻するに至った経緯には問題山積なので、病気になってしまうことを「仕方がない(避けようがない)」と捉えるのは論理の飛躍というもの。
むしろここでは、病気になるのは「異常な事態」「例外的な事象」と理解するのが妥当でしょう。異常事態に至る経緯の細部に例外があったとしても大局は変わりませんから、「病気」と「天気」とは似て非なるものだと言えます。
いずれにしても治療はまず、病気で壊れてしまった部分の修理に始まりますが、上述した「身体というシステムの使い方」の誤りも同時に修正しないと、治りにくいし、一時良くなってもまたすぐに壊れる。
この複眼的な視点の欠落が、故障した身体の修理技術から発達した現代西洋医学の弱点であり、「病気になるのは仕方がない」という誤った「諦め」の原因ともなります。
実はこれを書いている当院院長自身が「病気になるのは仕方がない」のだと妄信し、中学時代のアレルギー性鼻炎に始まり、蕁麻疹、喘息、潰瘍性大腸炎、不眠、うつ病、高血圧、摂食障害でQOLを下げまくり、肥満体で突入した中年以降も過敏性腸症候群の疝痛発作と反復性頭痛の閃輝性暗点に怯えながら犬猫の開業医をやるという「黒歴史」の主。
自分の身体というシステムの「使い方」を間違えた院長が、病気の犬や猫を治そうというのですから、闇は非常に深かったと言わざるを得ません。
しかし、紆余曲折と試行錯誤の末にたどり着いた結論として、30年以上に渡る現代西洋医学への盲目的な依存を断ち、漢方との出会いから新たに統合医学の視座を得たことで、ほぼすべての慢性疾患を克服。予想もしなかったスケールで生活が明るくなり、現在に至ります。
この(失敗と挽回の)実体験から得た知見と教訓を、今まだ困っている皆さんと共有しない手はありません。
病気というものに関する発想の転換を進め、正しい身体の使い方に習熟し、ペットも飼い主さんもみんなまとめて健康を取り戻し、人生を明るく変えていける手応えを掴めるよう、一緒に学んで参りましょう。
治療の捉え方
頼れる「山岳案内人」として
「病気の治療」を、皆で目指す大きな山に例えるなら、そこにはきっと複数の「登山道」があるはずです。登る人の体力やコンディション、時には好みによって、選ぶべき登山道はおのずと決まります。
私たち獣医療提供者は、安全な登山をサポートし、成功に導く「山岳案内人」のようなもの。案内人が「標準的な登山道(現代西洋医学に)」に精通すべきことは、半ば当たり前のことです。
そこで特に当院が注力するのは、漢方や鍼灸に代表される「東洋医学的な登山道」の整備。残念ながら往々にして非科学的でいかがわしい登山道が紛れ込む「玉石混交」状態の同分野において、安心、納得して選択していただける選択肢を用意し、「治す」だけにとどまらず、「すぐにまた病気にならない」段階にまでご案内するのが使命であると考えます。
動物にとって最善であり、お世話にあたる飼い主さんにとっても最適な「登山道」を提案できるよう、しなやかな発想で日々の診療業務に臨んでおります。
診療の指針
指針1:「すぐにまた病気にならない治療」
当院は、従来からの西洋医学にとどまることなく、充実したカウンセリングに基づき、漢方・鍼灸など東洋医学的な手法を駆使した「すぐにまた病気にならない」治療、ホリスティック(※)な飼養管理助言を提唱しております。
従来型の西洋医学的手法と、東洋医学の持つメリットを自在に組み合わせ、効率良く、再現性の高い治療を提供するのが目的ですから、動物の漢方治療における当院の豊富な経験や造詣の深さを標榜するのは当然として、同時に、巷で見かける「なんでもかんでも漢方で治療しよう」とする発想は是としない点についても、あわせて強調しておきたいと思います。
(※)「全体的」「包括的」という意味。物事を部分だけでなく、心、身体、環境などを含めた全体として捉えること。
指針2:「オーナー様の不安を取り除く診療」
さらに当院の治療を特徴づける認識として、「オーナー様の不安を取り除く」ことを重視している点を挙げておきたいと思います。
「そんなの当たり前のことだろう」とお感じになるかもしれませんが、当院の問題意識は「オーナー様の強い不安や恐れ」自体がペットの病気を深刻化させたり、再発の呼び水になっている例が少なくないという点にあります。これは精神論などではなく、一般性のある事実なのですが、納得していただくには相応の説明を要する現状もあります。
特に病気が長期化し難治の様相を呈するケースの解決においては、オーナー様が心の平穏を取り戻すプロセスがどうしても必要で、その実現にスタッフ一同がしっかりコミットする決意の下、日々の診療にあたっております。
漢方・統合医療について
東洋医学と西洋医学で広がる選択
現代科学の発展に重要な役割を担った考え方の一つに、還元主義というものがあります。
複雑な事象やシステムを、より基礎的な要素・単純な要素に分解し、その要素ごとに分析を加えて詳細を明らかにし、そこで得られた成果を再びまとめ直せば、分解する前の事象やシステム全体を知ることが出来る…とする考え方や手法を還元主義というのだそうです。
複雑で難しいものを、取り扱い可能なレベルに単純化する目的で「手に負える規模」まで一旦バラバラにする。その際、細部を切り捨てず、漏れなく細分化できれば、後からそれぞれについて得られた知識を束ね直すことで、元の全体を理解できる知識に「還元」(再構成)することもできそうですが、実際はそう簡単にはいきません。
しかしこの「簡単にはいかない理由」を議論し始めると、途方もない論考が必要になります。
ひとまずここでは、還元主義の前提となる「理解できる要素にまで分解する」というときの「理解」とは、目に見えている事物を、今現在の知識によって我々が説明したり、納得したりできるという意味で使われているから(実際にはそう簡単にいかない)、と指摘するにとどめます。
上記のような状態での「理解」は、我々の目に見えているもの、我々の頭脳がすでに知っている事物が、この世界のすべてであるという前提の上に成り立つものです。
昨今、科学的なエビデンス(証拠、根拠)として有り難がられている言説の大半も、見えている物、今すでに分かっている知識の範疇で説明や納得が可能であるという点が、実は価値の根幹を為しているようにも見えます。
したがって、いわゆるエビデンスと呼ばれるものでも、それが本当にどの程度、対象の本質を言い表せているのかについて常に検証が必要であり、反射的に鵜呑みにしない用心深さこそが、真に科学的なスタンスだということになります。
他方、システム全体は統合された総体として振る舞い、常に構成する「部分」の総和以上であるから、いくら「部分」の議論を尽くしたところで全体に還元することは出来ないとするのが「ホーリズム」(全体論)と呼ばれる概念。この考え方で生体を捉えるのが「統合医学」または「ホリスティック医学」です。
例えば、当院が日常的に活用している漢方医学は、このホリスティック医学の中核をなす東洋医学の一分野ですが、上述した現代科学的な還元主義の手法が登場するよりずっと昔に誕生した経験医学の体系であり、膨大な試行錯誤の末に蓄積された「こうすると上手くいく(ことが多い)」といった成功法則の集大成でもあります。
(こうすると、よりも)「なぜ」上手くいくのか?を如何にすっきりと説明できるかに目が向きがちな西洋医学とは対照的に、上手くいく(治る)という結果やそのための手順を整理することに力を注いだのが漢方医学や東洋医学の特徴です。とてつもない数の試行錯誤をドンっと並べて、「まあとにかく結果はこうなったんです」と説き起こす方式は、「論より証拠」という言葉を想起させます。
現代西洋医学が拠って立つ「還元主義」も、漢方医学における「論より証拠」方式も、論理的な詰めの甘さがある点では、どちらも不完全なものだと言えます。「複雑な事象やシステム」の権化である生体を対象とする以上、どちらの方式を選択したところで、議論の途中に漏れや取りこぼしがたくさん生まれそうなことは、想像に難くありません。
しかも我々人間の大脳には、(事実として正しいかどうかとは無関係に)最初に正しいと自分が納得したことを「正しい」と錯覚し続ける欠陥があると言われ、これは論理的な思考を積み上げる際に、深刻な弱点となる特性だと自覚して考えを進める必要もありそうです。
このような状況下でも、不調に苦しむ動物の治療は常に待ったなしであり、どうにかして解決を目指さねばなりません。
そんな時に一番勝率が高くなる戦術はどんなものかを考えると、得意・不得意の中身がなるべく異なるような複数の手法を組み合わせて、ふさわしいタイミングで切れ目なく繰り出すのが良いだろうということが見えて参ります。
当院が掲げる「東洋医学と西洋医学で広がる選択」とは、全体論に立つ統合医学(ホリスティック医学)と、還元主義に基づく現代西洋医学を自在に駆使する集学的な治療の強みを表現したものなのです。
治療費について
当院の責任、飼い主さんの責任
愛玩動物の診療報酬は診療施設が個別に設定し、受益者(飼い主さん)に請求が行われます(この方式を自由診療と言います)。
強制加入の皆保険制度を裏付けにして、すべての処置や薬剤に対して、国が一律に報酬を定める保険診療とは異なり、利用する動物診療施設ごとに独自の報酬体系が存在します(他方、自由診療においても、一般的・汎用的な処置については、ある程度の相場が存在する状態とも言えます)。
当院では、診察の結果、選択し得る治療を飼い主さんに提案する時点で、それぞれにかかる費用の説明を行います。同時に「治療しない」ことによって将来発生し得るリスクやコストについても見通しを示します。
動物の診療をご依頼される経験が少ない飼い主さんや、事前に詳細な積算(見積り)を希望される飼い主さんに対しては、一般的・汎用的な処置など、診療報酬が比較的少額の場合であっても、具体的な治療処置に着手する前に、当初見込まれる費用について説明の時間を設けます。
入院を要する治療や外科手術ならびに歯科口腔外科処置、或いは抗がん剤など高価な薬剤を使用する治療など、ほとんどの飼い主さんにとって未経験であるような分野については、特に詳細な費用の積算を行い、あらかじめ説明を受けていただくことを治療着手の要件とさせていただいております。
また、治療が長期に及ぶことが予想される場合や、そもそも終了の時期を見通せない状況下で治療が提案される場合には、上述した詳細な積算の説明に加え、現状認識に不十分な点がないか、いったん示されたご意向に変更が生じていないか等の確認を、治療の節目となる局面ごとに繰り返し実施させていただくことで、すべての治療が飼い主さんの明確な意思の表明とご依頼によって進んでいく状態の維持を図ります。
以上、治療費について当院が果たすべきと考える責任に関する認識や実務についてご説明させていただきました。
次に、飼い主さんの側にもご認識いただきたい「責任」について、お話しさせていただきます
飼い主さんに治療提案を行う我々獣医療者の役割の基本は、「治療としてより良いもの」「飼い主さんの要望に沿った成果が得られる可能性が高いもの」を飼い主さんに提示し、それら選択肢の実現可能性や科学的かつ論理的な合理性を担保することであると考えます。
したがって、獣医学的な理由以外の事情により、治療の内容や規模を制限・縮小する(ダウングレードする)必要が生じた場合の決断は、飼い主さんにしかできないものであるという点を十分にご理解いただきたく存じます。
例えば、長期にわたる治療管理の中途において、もうこれ以上継続して治療費を支出することにご家族が合意できないといった状況では、治療を中止ないし簡略化する(ダウングレードする)決断自体は飼い主さんご自身がしなければならないものであり、我々獣医療者を含む「他人」にそれを期待するのは筋が違っていませんか?ということです。
もし仮に、我々獣医療者が皆さんの大事な家族である動物の顔を見ただけで、(獣医学的な検討抜きで)「標準治療はあるし治癒も見込めますが、あなたのペットには勝算が低く費用も掛からない昔の治療でいいですよね?」などと言い放ったとしたら…を想像していただければ、ダウングレード方向への決断は飼い主さんご自身以外には決してなし得ないことがご理解いただけると思います。
当院は、「もう打つ手はない」とは言わないことをモットーに掲げる動物診療施設です。治療内容や規模をダウングレードせざるを得ないというご事情を伺った際にも、次善の策をひねり出す心構えと準備に余念はありません。
しかし同時に、いついかなる状況においても、最終的に「飼い主さんが決断するしかない」部分というものは、決してゼロにはならないのだということもご認識いただきたいのです。
高価な新薬を試してみたい、或いはこの先もずっと手厚い治療を続けてあげた方が良いとは思うが、それを許さない事情が発生した場合などには、本意ならずともダウングレードする決断を下さねばならないこともある。それが飼い主さんの担うべき責任ではないかと考えます。
飼い主さんが上記の責任を担うご覚悟である限り、当院は決して諦めず、背を向けることなく、問題解決のために力を尽くします。
セカンドオピニオンへの取り組み
飼い主さんがセカンドオピニオンを得る場としてもご利用いただいております。
弱り果てたペットを診てくれる動物病院をいくつも探して、ようやく当院に辿り着くという方がいらっしゃいます。あれこれ試しても上手くゆかず、追い詰められた末に「漢方」の効果に望みを託されて・・・というパターンが多いようです。
しかし、病気を治すためには腕のいい獣医師やクスリ云々以前に、ペットの持つ自然治癒力が残っていることが死活的に重要です。他方、来院が遅くなった理由を尋ねると、「よその動物病院で診察を受けることは、かかりつけ医に背を向けているようで心苦しい」と話される方も少なくありません。心情的にはよく分かりますが、過ぎた時間を取り戻すことはできず、悔いが残る原因にもなりかねません。
当院の獣医師も含めて、一人の獣医師に何もかもすべてを期待することには無理があり、症状や分野に応じて異なる動物病院に相談したり、診察を受けることを躊躇するのは、合理的な判断ではありません。当院で提案された治療を受けたからと言って、元々お世話になってきたかかりつけ医まで変える必要はありません。
当院は、飼い主さんがセカンドオピニオンを得る場としてもご利用いただいております。ご家族だけで抱え込み、堂々巡りで悩んでいる間にも時間は過ぎてゆきます。起死回生、逆転のチャンスが残っているうちに、ご相談いただきたいと思います。