③生涯にわたり繰り返し接種されるワクチンはイヌの福祉に反するのでは?
狂犬病に限らず、予防ワクチンというものは、コスト・便益・リスクといった相反する可能性のある論点どうしを整理し、最終的に実施の要否を決断すべきものです。
(ワクチン一般についての考え方は➡こちら)
結論から言えば、それがワクチンである以上、イヌの身体に対して「無いに越したことはない」影響を与える可能性をゼロにすることは原理的に不可能ですが、接種により確定的に得られる便益は非常に大きなものです。
社会不安を未然に防ぎ、社会的コストの縮減が出来るという我々人間の立場としては「イヌの皆さん、すまんがキミたちに注射されてもらうことにします」とでもいうべき状況にあると言えましょう。
その上で、イヌたちやそのオーナーさんにとって救いとなる事実を少し紹介いたします。
コロナ騒動の際に物議をかもした核酸医薬と呼ばれる新奇な実験的製剤を、従来の概念で云う「ワクチン」と同じ効果を得る目的で、人間に対して、広範に「治験」として投与した経緯はまだ記憶に新しいところでしょう。
その際に登場したレプリコン(次世代mRNA)ワクチンなる製剤を、イヌの狂犬病予防接種にも導入しようとする動きがありました。
その完成度の低さが目に余る状況であった核酸医薬全般に対して、技術論的に強い疑念を持つ私は「困ったことになりそうだな」と憂慮したものでしたが、現在のところ、幸い杞憂に終わっております。
理由は、現行の狂犬病不活化ワクチンの商品性があまりに高すぎて、問題だらけのレプリコン如きキワモノには、まるで歯が立たなかったというもの。
効果の安定性、副作用と事故の頻度が極めて低いこと、価格、確立した安定供給体制、医薬品としての品質安定性や保管の容易さなど、すべての点で不活化ワクチンには敵わなかったわけです。
公益性と負担とのバランスという大義のもと、イヌたちにいくばくかの負担を強いることで成り立つ狂犬病防疫事業。
安全性の高い不活化ワクチン製剤を使用し、接種条件(イヌの健康状態、接種前後の平穏安静の確保など)の整備に努めるなら、社会通念上許容される範囲内に、動物たちの福祉も担保されるものと判断してよいのではないでしょうか。
(第四回に続く)
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