中医研の5月例会

 

毎月(原則)第二土曜日の午後は外来をお休みにし、仙台でヒト(人医)の先生方の勉強会に参加させていただいてます。

大学の獣医師養成課程で学ぶのはもちろん「獣医学」に相違ないのですが、学問としての医学の土台部分(生物学、基礎医学)においては、ヒトもイヌもウマも大差ありませんので、学生はまず先行して発達した古典的なヒトの医学を教わり、そこが一通り網羅できた時点で「しかし、イヌではここがヒトと違う」「ここはウシに特有の仕組みです」といった「例外」にフォーカスした解説を受けました。

終わってみると、それがどうやら獣医学というものだった・・・と、今は概括できますが、教育されていた当時は「なんだか分かりにくい体系の学問だよなぁ」としっくりこないものをたびたび感じたことを覚えています。

その後、臨床獣医師としてキャリアを重ねていった結果、獣医学領域での専門性を高めるほどにヒトの医学との距離感はいつの間にか途方もなく広がり、その功罪が相半ばする状態が恒常化していったように思います。

しかし、これはヒトの医学の上に蓄積された大知(たいち)からの乖離にもつながり、非常に危険な方向性であることに、ある時期個人的に気が付きました。

これに関連して後で知ったことですが、人医の世界においても、あまりに還元主義的な現代医学ばかりが絶対視された結果、ヒトもまた動物であるというあたりまえの視点が見事に抜け落ち、動物にあるまじき無茶な生き方に対する問題意識が失われていった由。

そのことを理路整然と説明する困難さを克服する試みの一つとして、ヒトと動物を対比して論じることに注目する動きもあったというのです。

以前から私も所属する日本伝統獣医学会が、最近「比較統合医療学会」に名称を変更し、人医領域との交流を推進する方向性を打ち出したことも、単なる偶然ではなかったのでしょう。

ヒトの現代医学の派生として発展した現代獣医学に、たびたび限界のような行き詰まりを感じるなかで、いくつかの偶然に導かれた私が手掛けることになった中医学と、その獣医療への応用。

ここに至って、いま再び予期せぬ形で人医の先生方と一つの机で中医学を学ぶ場に呼び出された幸運は、まもなく人生の「正午」を過ぎようとしている私に、「(人生の)たそがれ前に宿題を終わらせておけよ」と肩を叩いて促しているような、そんな気もして参ります。

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