ペット中医学研究会東北地区セミナー開催

 

先週末、ペット中医学研究会の東北地区セミナーが開催されました。ペット中医研の大多数の会員は関東以西で開業している関係で、年に5~6回ある学術講習会は東京で開かれるのですが、東北にも中獣医学を普及させるべく、講師派遣を受けて仙台でも独自の講習会を続けています。

今回は中医学的診断時の特徴でもあり、物言わぬ動物の診断において必須の技術である「舌診」と「脈診」の実習をリクエストし、一年越しでの実現となりました。

舌診は読んで字の如く動物の舌を見て、そこに現れる兆候から病気の趨勢を読み取ったり、外見上は健康そうな個体の未病段階における傾向性(理想的な健常状態からの乖離)を知る診察法のこと。

脈診は動物の体表の決まった部位において経皮的に動脈の拍動を触診し、そこに現れる波動の特徴から身体の状態を推測する診察法。

舌診も脈診も、当院の診察室で初めてその様子を目の当たりにした飼い主さんの中には、歓楽街の路地裏で開業する手相占いのおばちゃんを覗き見るような物珍しさで眺める方も少なくありません(笑)。

私は「手相よりだいぶ高確率で目標とする情報を導き出せる」のではないかと感じており、診断精度の説明はすっ飛ばし、敢えて「当たるんですよ」と易者モードで解説に入る方が、飼い主さんにはとっつきやすい印象です。

動物の舌診は、当然ながらイヌやネコに「あっかんべーして~」と頼む手が使えませんので、ここが最大の難点。熟練したスタッフがだましだまし開口保定してくれても、舌を出してくれはしません。温暖な時期はパンティング(開口呼吸)を待つことになりますが、冬はかなり難儀します。

しかし、舌診に必要な知識と経験があれば、舌診自体の信頼性はかなりのもの。病態の把握や診断に苦慮する難治症例で、舌だけを頼りに処方を組み替えた途端、膠着状態がすぅーっと解消して行った経験は一度や二度ではありません。

一方の脈診は、脈を取る指の力の加え方からして、指導者がどの程度圧迫して「〇〇脈だ」と診断したのかを書籍等から直接学ぶことはできません。特定の患者役を少人数の研修者で囲み、指導者がつきっきりで教授しない限り、座学のみの研修者は雲を掴むような脈診実践を延々と繰り返すだけに終わってしまいます。

その意味で、今回の東北地区セミナーのように長時間、ベテランの中医師から手取り足取り指導を受けられる機会は、実は千載一遇の大チャンスということになります。参加獣医師の数が伸び悩む地方セミナーゆえの贅沢な実習は、確実に当院獣医師の診断技術向上に寄与すること請け合いです。

脈診はともかくとして、眺めてみるだけの舌診でしたら、飼い主さんがペットの日常健康チェックに加えることも可能です。ネットで検索すると、ヒトの舌診に関する図表等がたくさん出てきますので、まずはご自身で鏡の前に立ってみて、研究してみてはいかがでしょうか。

そのうえで、なんとなくでも舌診の雰囲気がつかめてきたら、ペットの舌も覗いてみてあげてください。特にワンちゃんの場合は、開口呼吸もあり、舌の大きさもそれなりにあるので、舌の状態が日々変化してゆく事実まではほどなく実感できるようになるはず。

上述の通り、院内の診察台上で舌を観察するのには多くのハードルがありますので、ご自宅で飼い主さんが気付いた色の変化などを教えていただけると、我々獣医師は重要なヒントをゲットできるかもしれません。ぜひ、お試しあれ。

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