あおぞら診療日記「チョビちゃん」

チョビちゃんは血液系の腫瘍に対し化学療法(抗がん剤)を適用して一命を取り止め、寛解状態までたどり着いた「がんサバイバー」。

幾度も試練を乗り越え、疫学(医学における統計学)的に見込まれる生存期間をもはるかに超えた大健闘ぶりを発揮。化学療法の副作用を防ぎつつ、がんの再燃抑止を目指す局面では、中医学の成果をフルに活用。漢方を基軸とした医療的管理と、飼い主さんのきめ細かな、そして極めて息の長い日常ケアが車の両輪となり、良好なQOLを維持しています。

 

 

====================命はもともと自立的=====================
病気になったとき、それを治すとはどういうことでしょうか。
たとえば胃に炎症が生じて食欲がなくなったときに飲む胃薬。
炎症で傷んだ胃粘膜を様々な機序を介して修復することを助けますが、
飲んだ胃薬そのものが胃の中で「正常な胃粘膜」に変身したり、置き換わることは出来ません。
炎症で壊れた胃粘膜も始めはそうであったように、
損傷部を修復するために新調される胃粘膜もまた「身体」が作ってくれます。
繰り返しますが、胃薬は修復の過程を助けるのであって、
飲んだ薬自体が胃粘膜に成り代わって胃の中に存在し続ける訳ではありません。
傷んだ身体(の一部分)を元通りに直すのは例外なく身体自体の営みで、
治療はそれを促したり、邪魔する要因を取り除くだけです。
つまり、命は本来自立的であるということ。それに寄り添うのが治療者の役目。
動物にその自覚を求めるのは無理としても、われわれ獣医療者はもちろん、
飼い主さんにとってもこの深淵なる原理への理解は意義深いでしょう。
命が自立的であることへの理解を(無意識的な場合も含めて)深めた飼い主さんが、
最愛の動物を健やかな状態に保つことに成功している様子は、
獣医師の私にいつも清々しい感動を与えてくれます。
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