フィラリア予防の仕組み

蚊によって媒介されるフィラリア症が薬で予防できることは良く知られていますが、ここで言う「予防」には、一般的な予防のイメージとはやや違った意味が含まれています。

どういう事かと申しますと、フィラリア予防薬で「予防する」のは、フィラリア(犬糸状虫のこと)がイヌの心臓付近に寄生して悪さをする「犬糸状虫症」の成立を予防しているのであって、イヌがそこらへんを飛び交う蚊に刺されることを防ぐわけでは無いばかりか、刺された時にフィラリアがイヌの体内に侵入するのを防ぐわけでもないというのが、正確な説明だということです。

つまり、予防薬の投与の有無に依らず、イヌの体にはフィラリアは侵入してくるものだと言うこと。その後、イヌの体内で予防薬が「事後的に」フィラリアを駆除出来た場合だけ、心臓あたりまでフィラリアの虫が泳ぎ着くのを回避できるという、その水際作戦のことを「フィラリア症を予防する」と表現しているわけです。

従って、フィラリア予防薬の投与は、そのタイミングが命。年がら年中投与し続ければ、理論上、フィラリア症感染のリスクは極小化されますが、コストの問題が生じます。また、予防と言う以上、まだ問題が実害を伴う前の段階で先制的に化学物質をイヌの体内に送り込むわけですから、当該化学物質の投与は必要最低限の量と期間にとどめることが合理的です。それゆえ、主として予想される気温の推移に基づき、地域ごとに導き出される「予防すべき期間」にぴったり即した投与計画を策定することが、安全で無駄の無いフィラリア予防策であると言えましょう。正しいタイミングで、適切な用量の予防薬を投与する。これが肝要です。

フィラリア症の予防措置は、保険と同じです。たとえばの話、火事が起きても5件に1件ぐらいは保障しないことがある火災保険、事故にあっても保障しないことがある自動車任意保険・・・なんて馬鹿げた契約のために、コスト(保険料)を負担する人はいないでしょう。フィラリア症の予防も、やるからには事実上の100パーセント防御を目指して、取り組むべきです。予防していたつもりだった(コストは負担していた)のに、やり方が間違っていたので、結局病気にかかってしまったというのでは、上記の馬鹿げた保険契約に保険料を払い込むようなものです。

予防の仕組みをしっかり理解して、無駄なく、確実性の高い予防措置を愛犬に施してあげてください。