「狂犬病予防接種」
平成25年度の狂犬病予防接種(法定注射)が始まりました。
狂犬病は感染発症すると救命の難しい「死の病」です。ヒトを含むほとんど全ての哺乳動物で致死的な経過をとりますが、主に狂犬化した犬の噛み傷により被害が拡大しますので、犬を対象に予防接種が義務化されています。
吸血コウモリなど、狂犬病ウイルスに感染しても「平気な(発症しない)」動物がいるため、かつて克服された天然痘などのように、地球上から撲滅することはほぼ不可能であると考えられています。実際、アメリカ合衆国を始め、世界の大半の地域では、現代においても毎年多くの死者を出しています。
しかし、日本は周囲を海に囲まれた地理が幸いし、感染動物が自由に国土に出入りしづらいため、海外から持ち込まれる動物に対する検疫を徹底すれば、理論上、日本国内での狂犬病禍は回避できることになります。現実には、地方の港湾に着岸する外国船から検疫なしで勝手に上陸する動物もいますので、日本国内に暮らす犬の全てに予防接種を実施することで、万が一狂犬病の持ち込みがあっても、そこから国内犬に拡がらないようにする事が、我が国における最終的な「防御線」になります。
つまり、世界の大多数の地域で実現不能な「狂犬病の恐怖がない」状態が、日本では容易に実現可能なのです。過去の熱心な取り組みのおかげで、現在まで何十年もの間、日本国内の犬から狂犬病を移されたヒトはいない状況が続いています。にもかかわらず近年、こうした知恵や危機感が忘れ去られ、「狂犬病清浄国」としての地位をみすみす手放すような状況が恒常化している地区もあることは、由々しき事態です。
狂犬病予防接種は、必ず受けさせましょう。